土地区画整理組合の総会で賦課金決議が行われると必ず問題になるのが、賦課金決議までに仮換地の売買が行われている場合、はたして賦課金を売主が負担するのか、それとも買主が負担するのか?という問題です。

これは、組合との関係では比較的単純で、賦課金は、①賦課金決議の日(または賦課金徴収規程の中で定められた一定の日)の土地の所有者(買主)が負担するのが原則で、②例外的に、売主と買主の連名で賦課金を売主負担としてください、という主旨の書面が提出されているときは、旧所有者(買主)に賦課金の納付を請求することがある、ただし、③旧所有者が納付しない場合には、組合との関係ではあくまで土地の所有者(買主)が賦課金支払義務を負っているので、買主に請求することになる、という取り扱いになっているかと思います。

問題は、売主・買主の当事者間の関係では、どちらが負担すべきか?ということです。
この点、まず大前提として、売買契約書の中で、例えば「将来、土地に賦課金が課せられたときは、売主が負担する。」と定められているときは売主負担になることは間違いありません。

問題は、売買契約では特に定めがなかった場合です。この場合、法的には、買主は売主に対し民法570条の(隠れた)瑕疵担保責任の規定に基づき、賦課金相当額の損害賠償請求ができないか?という形で問題が顕在化してくることになります。『瑕疵』(かし)なんていうと難しいですが、要するに『欠陥』の意味です。賦課金付の土地を売ったということになって、土地の一部に(法的な意味での)欠陥があったといえないか?という問題になるのです。

ところで、この瑕疵担保責任の問題でけっこう難しいのが、この『瑕疵』は売買契約がなされた当時に存在していなければならないと考えられていることです。
例えば、宅地にする目的で土地の売買契約をした後に、隣地にゴミ処理場が建設されてしまったとしても、売買契約時にゴミ処理場があったわけではないので、通常は瑕疵があったなどとは言えません。ただ、契約当時に既にゴミ処理場の建設計画があった場合はどうでしょう?この場合には、瑕疵があったと言っても良いような気がしてきます。では、計画が確定的ではなく、検討段階にあった場合はどうでしょう?おそらく人によって判断が分かれるでしょうね。このように考えるとけっこう難しい問題なのです。

で、この問題に関しては、最近、最高裁判所が判断をしました。平成25年3月22日判決(判タ1389‐91)がそれで、案件としては、仮換地の売買が行われた数年後に、保留地の分譲が行われたが、その分譲が芳しくなかったため、組合の総代会で賦課金が決議されたというものです。

買主が、賦課金は瑕疵にあたるとの理由で、売主に賦課金相当額の瑕疵担保責任を追及しました。最高裁は次のように判断しています。

「A組合が組合員に賦課金を課する旨決議するに至ったのは、保留地の分譲が芳しくなかったためであるところ、本件各売買の当時は、保留地の分譲はまだ開始されていなかったのであり、A組合において組合員に賦課金を課すことが具体的に予定されていたことは全くうかがわれない。そうすると、上記決議が本件各売買から数年も経過した後になされたことも併せ考慮すると、本件各売買の当時においては、賦課金を課される可能性が具体性を帯びていたとはいえず、その可能性はあくまで一般的・抽象的なものにとどまっていたことは明らかである。

 〔中略〕土地区画整理組合は、その事業に要する経費に充てるため、組合員に賦課金を課することができるとされているのであって(同法40条1項)、上記土地の売買においては、買主が売買後に土地区画整理組合から賦課金を課される一般的・抽象的可能性は、常に存在しているものである。

 したがって、本件各売買の当時、売主が賦課金を課される可能性が存在していたことをもって、本件各土地が本件各売買において予定されていた品質・性能を欠いていたということはできず、本件各土地に民法570条にいう瑕疵があるということはできない。」

結論的には、ただ仮換地の売買をした後に賦課金が課されたというだけでは不十分で、少なくとも組合内で賦課金導入に向けた議論がなされるなど、賦課金を課される可能性が個別的・具体的になっていないと、「瑕疵」には該当しない、ということなのです。

では、賦課金を課される可能性が個別的・具体的になっていればよいのか?

というと、そのような場合には、今度は、買主もその可能性を認識していたケースが多いでしょうから、今度は、「隠れた」瑕疵といえるかということが問題になりそうですね。

というわけで、買主の売主対する瑕疵担保責任の主張は、けっこうハードルが高いことがわかりました。
やっぱり仮換地売買の際には、将来、仮に賦課金が課されることになったら、それを売主と買主のどちらが負担するのか、きちんと売買契約書中に明記しておくのがトラブル防止のために必要ですね。