組合が、組合員に換地処分通知などの書類を送付したのに、組合員から受領拒絶にあい、書類が返送されてくるということはけっこうあるのではないでしょうか?

特に、事業に反対している組合員にとっては、組合からの送られてくる書類の受領を拒絶することはよくあることですよね。このような場合、組合としてはどうすべきでしょうか?

回答としては、土地区画整理法第133条1項に次のように定められています。

「施行者は、土地区画整理事業の施行に関して書類を送付する場合において、送付を受けるべき者がその書類の受領を拒んだとき、又は過失がなくてその者の住所、居所その他書類を送付すべき場所を確知することができないときは、その書類の内容の公告をすることをもって書類の送付にかえることができる。」

つまり、送付を受けるべき者が書類の受領を拒んだ場合として、組合としては、「公告」をすべきということになります。この「公告」は、通常は、書類の内容を官報掲載するともに、施行地区内の掲示板への掲示、さらに、市町村長への通知及び市町村長の掲示がされている旨の公告によって行われます(土地区画整理法133条2項、77条5項)。
実際、とても費用と手間がかかります。

では、受領拒絶の場合にすべて公告をしなければならないのか?というのが次の問題です。

たとえば、郵便局員が組合員のお宅に行き、書類を渡そうとしたところ、受領拒絶にあって、その組合員に書類を渡せなかった場合と、郵便局員が組合員のお宅に行き、組合員の妻に書類を渡したが、翌日、その組合員が組合事務所に書類を返しに来たという場合で何か違いがあるのでしょうか?

実は、この問題は、書類がどの時点で組合員に届いたといえるか?が重要な問題になってきます。

そして、通説は、いったん組合員が書類の内容を了知し得る状態になれば、実際に組合員が開封して中身の書類を見なくても書類は到達したものと解しているのです。

したがって、前述の例でいうと、いったん組合員の妻が書類を受け取った段階で、組合員は書類の内容を了知しえる状態になった、つまり書類は届いたということが言えますので、仮に後で開封されずに組合に返送されてきても、公告する必要はありません(昭和4・4・3 茨城県土木部長あて建設省都市局区画整理課課長回答参照)。

現在、組合が組合員に書類を送付する場合、多くの組合では配達証明付きの書留郵便で送付しているのではないかと思います。ただ、私は上記の解釈を前提にすると、「特定記録」郵便をもう少し活用できないかな、と考えています。
配達証明付き書留郵便ですと、組合員に渡した(配達した)ということまで郵便局が証明してくれるので、確実な送達方法ということがいえるのですが、他方で、組合員が郵便局員に対し直接受領を拒絶した場合には公告をしなければならないという結論になります。また、組合員が自宅に不在で、書類が郵便局に留め置きになり、留め置き期間経過により返送されてきた場合などは、組合員が受領拒絶しているわけではないので、再度、送付しなければならないということになりそうであり、非常に手間がかかります。

これに対し、特定記録郵便の場合、郵便局は組合員宅の郵便受けに入れたことまでを証明します。郵便受けに入れれば良いので、組合員が受領拒絶するということはありませんし、郵便局に留め置きになることもありません。そして、民法の解釈では、「郵便受けに入れれば、了知可能であれるから送達がなされたと言える」と考えられているのです。したがって、後で開封しないまま組合員が書類を返送してきても、既に「届いた」ということになりますので、公告をすることを要しないということになります。

というわけで、今後の組合は特定記録郵便を大いに活用すべきではないかと考えています。