賦課金決議がなされた場合、通常は、決議がなされたときの土地の所有者が賦課金納付義務を負うことになります。では、まだ賦課金を納付しないうちに、土地の所有者が仮換地又は換地を第三者に売ってしまった場合、その土地を購入した買主は、売主の賦課金納付義務を承継することになるのでしょうか?

実務上、この種の問題はけっこう発生します。賦課金を納付できない人は、お金に困っていることが多く、土地を売却してお金を調達しようとする場合があります。そのお金を賦課金の納付に充ててくれれば良いのですが、得てして自分の借金の返済に充ててしまい、賦課金はそのまま残るということがあります。
また、土地を売却するのではなく、銀行などの抵当権者から抵当権を実行されるということもあります。この場合、任意に売却したのではなく、強制的に売却されられたというべきですが、いずれにしても、土地は買主(又は買受人)によって新たに所有されることになりますが、その場合に、組合は、新たな買主に対しても賦課金の納付を請求できるのか?ということが問題になります。

この点、土地区画整理法第129条は、組合が、従前の土地の所有者にした処分、手続その他の行為は、新たに土地の所有権を取得した者に対してしたものとみなす、と規定しています。

これは、土地区画整理事業の連続性と安定性を確保するために認められた規定なのですが、この規定に従えば、組合が旧土地所有者に対して行った賦課金納付決定は、新所有者に対して行ったものとみなされることになりそうですので、組合は新所有者に対して賦課金の納付を請求できそうだということになります。

しかし、ここで少々問題があります。

実は、似たような問題として、換地処分によって清算金が確定した後に、換地の売買が行われた場合、清算金は新所有者に引き継がれるのか?という問題があります。これについて有名な最高裁昭和48年12月21日判決(判時733・51)は、次のように述べて「引き継がれない」と判断したのです。

「被上告人〔売主〕は本件区画整理事業による換地処分により所有権を取得した換地を訴外会社〔買主〕に売り渡し、その登記を了したというのである。このような場合、売主の取得した清算金交付請求権は、売買当事者間において右清算交付金の帰属について特段の合意がなされていないかぎり、売買の当事者間における関係のみならず、整理事業施行者に対する関係でも、買主たる訴外会社に移転しないものと解するのが相当である。けだし、清算金に関する権利義務は、土地区画整理法103条4項の公告があり、換地についての所有権が確定するとともに、整理事業施行者とそのときにおける換地所有者との間に確定的に発生するものであって(同法104条、110条1項)、爾後、土地所有者の移転に伴い当然移転する性質のものではないからである〔中略〕。したがって、土地区画整理法129条の規定が、換地処分発行後換地が譲渡された場合における清算金の交付の関係については適用がない旨の原判示は、正当として是認することができる〔る〕」

この最高裁判決に従えば、清算金も確定的に発生した後は買主に承継されないのであるから、それとのバランス上、賦課金も、確定的に発生した後は、土地区画整理法129条の適用はなく、買主には承継されない(つまり、組合は買主に対して賦課金の納付を請求することができない)と考える余地があるようにも思えます。

しかしながら、賦課金については、土地区画整理法129条の適用があり、賦課金決議後の売買であっても、組合は買主に対して賦課金を請求できるという考えが支配的だと思います。

その理由は次のとおりです。

(1)裁判所の競売手続きの中では、物件明細書の中で、賦課金が買受人が引き受ける債務として記載されており、したがって、裁判所は賦課金について買主に承継されるものと考えていると推測できる。

(2)判例タイムス1389号92頁に、「売買当時既に売主が賦課金納付義務を負っていたというケースについては、所有権の移転に伴い同義務が買主に移転することになるため(土地区画整理法26条1項)」との記載があり、土地区画整理法26条1項の観点からも、買主に承継するという考え方があることがわかる。

(3)通常、買主は土地区画施行地区内の土地を購入する際に、賦課金についても調査すると考えられ、その場合には賦課金相当額分だけ売買代金が低く設定されるだろうから、買主に承継されると考えても、特に買主に不利益はない。

賦課金について議論されるようになったのはここ10年〜15年くらいのものですので、この問題については直接の判例・文献が不足していますが、現在では賦課金を導入する組合も多いですので、いずれ判例・文献で詳しく論じられるようになるでしょう。私としては、今後の議論の方向性に注目していきたいと思います。