この質問が想定しているのは、単に、総会場に来ないで、議決書や委任状で議決権を行使することを組合員に「要請」するのではなく、新型コロナウイルスのクラスターにならないように、総会場に組合員が来ることを禁止し、議決書や(理事等への)委任状の提出のみで議決権を行使することを要請するという方法です。土地区画整理法では、総会を開催するには総会場を組合員に通知しなければなりませんので(法第32条第8項の「場所」)、総会場を決めないということはあり得ないと思いますが、総会場を決めたとしても、そこに組合員が現れた場合には、「組合員の来場は禁止されていますので、帰ってください。」という対応をすることを意味します。

このような対応は許されるでしょうか?

実は、土地区画整理法立法時には、危険な感染症が社会に蔓延して総会開催に困難をきたすような事態は想定されていませんので、このような事態に対しては何の言及もありません。

そこで、①何も言っていないので、従来理解されていたように、(組合員が総会に出席して自分の意見を表明することは組合員の重要な権利であるから)組合員の出席を禁止するような総会は不可と考えるか、②新型コロナウイルスの感染という従来想定されていなかった特別な事情が発生したので、それに応じて柔軟に解釈していこうと考えるかだと思います。

で、この点については、株式会社の株主総会における議論が参考になります。

会社法においても、もちろん新型コロナウイルスによって総会開催が困難となるような事態は想定されていません。しかし、株式会社の中には上場会社も存在していて、社会的な影響が大きいことと、特に日本においては3月を会計年度の期末とする上場会社が多く、その場合、6月末が総会の開催日となってきますので、いろいろな議論がなされ、現在までに法務省、経産省、金融庁がこれに関する解釈指針を出しています。

現在、取るべき方策として言われているのが、

1.総会を7月から9月までの間に延期する

2.来場自粛要請(議決権行使書やウェブ投票で議決権を行使してもうらう)、会場規模縮小、入場制限などで感染予防に配慮しつつ、6月末に開催する

3.感染予防に配慮しつつ、監査スケジュールの遅れも考慮して、6月末の総会では役員の改選等のみを行い、3ヶ月以内に継続会を開催して決算の報告を行う

の3つです。

なお、2020年5月11日の日経新聞(電子版)に「株主総会『来場禁止』も容認 経産省が指針」という見出しの記事が出て、株主に来場を禁止する株主総会の開催も可能かのような見解もあるようですが、経産省の指針を読んでみると、来場を禁止することについては、事前に「株主に対して理解を求めることが考えられます。」と述べているのみで、会社側が一方的に来場禁止にできるとまで言っているのかは疑問があります。私の知る限り、上場会社で株主の来場を禁止して株主総会を開催するところはないようです(今後、株主招集通知の季節になりますので、注目しておきたいと思います。)。

以上のような株式会社の議論を参考にすると、土地区画整理組合でも、組合員の来場までを禁止することまではできず、上記1(延期)か2(来場自粛要請等)のどちらかでしょう。上場企業の場合には今回のコロナ騒動により監査スケジュールが大幅に遅れておりますので、上記3(継続会の利用)のような議論が出てきますが、土地区画整理組合の場合には、監査スケジュールが遅れるということはないように思いますので、結局、コロナの感染拡大防止のために延期するか、感染拡大防止に配慮しつつ6月中に開催するかだと思います。

既にご承知のとおり、政府は、5月14日に39都道府県で緊急事態宣言を解除し、残りの8都道府県についても、5月21日に再度、解除するかどうかを判断すると報道されています。
そうすると、コロナウイルス感染拡大防止のために、総会を延期するとか、可能な限り感染拡大防止措置をとりつつ6月中に開催するとかは言えるにしても、組合員の来場を禁止して総会を開催することは「違法」と解釈される可能性が高いと想います。
早く新型コロナウイルスが終息することを願っています。


◆弁護士 飛田 博